選評
五千句を越える作品の中からの選句、正に緊張の連続でした。課題から考えてみて無理もありませんが、集句の中には、「大器晩成」「試歩」「定年後の時間」等に関するものがかなりありました、一又、動物の方では思っていたとおり「亀」「かたつむり」「牛」等の作品が目につきました、これは題詠の宿命だと思いますが、単に着想が同じだけの理由で没にする訳には行きませんので、それらの中から何句か抜句しております。
たった十七音の世界で作品の中に「ゆっくり」を詠み込みますと、四音取られてしまうことになります、そんなことを考えますと与えられた課題から、どのようにしてイメージを膨らませて行くかが大切なことではないかと思います。その人の年齢、川柳歴や育って来た環境に加え、感性等によって広がって行く世界は違うと思いますが、如何にして新鮮味を吹き込めるか、そして他の人達が見ていない世界を探すことが出来るのかが、一つのポイントだと思います」
着想がどんなに良くても、表現の仕方によっては良くなる一方で、逆に悪くなってしまう事もあります。句意をしっかり伝えるためには、言葉を多く知ることと正しく使うことだと思いますので、常にその辺に注意をしている次第です。川柳界では殆どの人が作家であり、読者であり、そして選者にもなります。そして川柳には満点の作品はあり得ないと思います。こんな点が奥の深い所であり、また魅力なのかも知れません。
鈴木柳太郎
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